これだけ読めばOK!食品衛生法の基礎と実務ポイントを一気に解説

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食品関連の事業を行う上で、正しく理解しておきたい基本法の一つが「食品衛生法」です。

HACCPの義務化やリコール報告制度の導入など、制度の改正に伴い事業者に求められる対応も年々進化しています。特に近年は、食品安全に対する社会的な意識の高まりや、国際基準への対応、インバウンド需要の再拡大などを背景に、現場での対応力が問われる場面が増えています。

本記事では、食品衛生法の目的や概要、これまでの法改正のポイントを踏まえつつ、食品等事業者が実務上押さえておくべき7つのルールを中心に、分かりやすく解説します。

1. 食品衛生法とは

食品衛生法とは、食品の安全性と衛生を確保するために制定された法律です。

食品衛生法の第一章の総則、第一条では、以下のように記されています。

「この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。」

引用:食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)|e-GOV法令検索

ここでは、食品衛生法の定義や目的、違反時の罰則について分かりやすく解説します。

食品衛生法の定義

食品衛生法(正式名称:食品衛生法(昭和22年法律第233号))とは、日本国内で流通・販売される食品の安全性を確保することを目的とし、1947年に制定された法律です。

この法律は、食品の製造から販売、飲食の提供に至るまで、すべての段階における衛生管理を義務付けることで、消費者の健康を守ることを目指しています。また、食品衛生法では「食品」「添加物」「器具・容器包装」「表示」「営業許可」「監視・指導」など、幅広い分野について定められています。例えば、食品添加物の使用基準、食品の保存・調理・流通に関する衛生基準、施設の清潔保持義務などが含まれ、事業者はこれらに従って運営する必要があります。

食品衛生法の目的

食品衛生法の最大の目的は、消費者の生命および健康を保護することです。

具体的には、食中毒の防止、有害物質の混入防止、表示の適正化などを通じて、国民が安心して食品を購入・摂取できる環境を整えることにあります。食品事故や違法表示が発生すると、消費者の信頼を損なうだけでなく、企業の社会的信用にも大きな影響を与えることになります。そうしたリスクを未然に防ぐため、食品衛生法は食品等事業者に対して適切な衛生管理の実施と、必要な許認可の取得を義務付けています。

また、国際的にも食品の安全性は重要な課題とされており、日本が輸出入を行う上でも、食品衛生法の整備は国際社会からの信頼を得るために不可欠です。そのため、厚生労働省や都道府県などの行政機関が中心となって、法令の周知徹底と事業者への指導・監視が行われています。

食品衛生法の罰則

食品衛生法に違反した場合には、行政指導や営業停止といった行政処分だけでなく、刑事罰が科されることもあります。

食品衛生法の第十一章で定められている罰則は下表のとおりです。

条文 違反内容の概要 対象者 罰則
第81条 有害食品の販売、無許可営業、命令違反(営業停止・廃業命令など) 営業者等 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科可)
第82条 表示違反、施設基準違反、届出違反、HACCP関連違反など 営業者等 2年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科可)
第83条 禁止命令違反、虚偽報告、秘密漏洩、基準違反など 営業者、関係者等 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
第84条 登録検査機関の業務停止命令違反 登録検査機関の職員・役員 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
第85条 臨検・報告拒否、虚偽報告・届出違反、命令違反 営業者等 50万円以下の罰金
第86条 検査機関による無許可廃止、帳簿不備、検査・報告妨害など 登録検査機関の職員・役員 50万円以下の罰金
第87条 衛生管理者が職務怠慢により違反行為を放置した場合 衛生管理者 関連条文(第81~83条)の罰金を適用
第88条 従業者等による違反に対する法人責任(連帯責任) 法人・代表者等 最大1億円以下の罰金(条文による)
第89条 財務諸表の不備、虚偽記載、閲覧請求拒否 登録検査機関等 20万円以下の過料

参考:食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)|e-GOV法令検索

また、違反の内容が重大で社会的影響が大きいと判断された場合には、事業者名の公表やメディア報道につながることもあり、企業にとっては大きなダメージとなる可能性があります。そのため、食品関連事業者は日常的な衛生管理の徹底に加え、法改正や通知の内容を常に把握し、最新の基準に適合した運営体制を構築することが求められています。

2. 食品衛生法の歴史と背景

食品衛生法は、時代とともに変化する社会や技術、そして食のリスクに対応するため、たびたび改正されてきました。その背景を振り返ることで、現行制度の意義がより明確になります。

ここからは、食品衛生法の歴史と背景を見ていきましょう。

制定の背景

食品衛生法は、戦後間もなく制定されました。当時の日本は、物資不足や衛生環境の悪化により、食中毒や伝染病が多発していました。国民の健康を守るためには、食品の安全を確保するための法的枠組みが急務とされていたのです。

この法律は、従来の「伝染病予防法」や「刑法」に一部含まれていた食の安全に関する規定を、初めて包括的かつ体系的に整備した法律として重要な意義を持ちました。食の安全性を行政が監視・指導する体制を確立し、許可制度や検査制度の導入など、現在の制度の原型がこの時点で生まれました。

法改正の経緯

食品衛生法は、制定以降も食生活の多様化や国際的な衛生基準の変化に対応するため、何度も法改正が行われてきました。特に注目された改正の一つが、2018年(平成30年)の大幅改正です。

この改正の背景には、共働き世帯や高齢者世帯の増加に伴う調理食品や外食・中食へのニーズの拡大、輸入食品の増加による食の国際化など、食を取り巻く環境の大きな変化があります。また、都道府県をまたぐ広域的な食中毒事件の発生や、食中毒患者数の下げ止まりといった課題も深刻化していました。特にノロウイルスやカンピロバクターなどによる健康被害が継続的に報告されており、国民の健康を守る上で対策の強化が求められていたのです。さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催や食品輸出の促進を見据え、国際標準(Codexなど)と整合性のある食品衛生管理の導入が急務となりました。

こうした背景のもと、HACCPに基づく衛生管理の制度化や、リコール報告の義務化営業許可制度の見直しなど、実務に直結する内容を含む抜本的な改正が実施されました。

3. 食品衛生法の主な内容

食品衛生法には多岐にわたる規定がありますが、中でも現場の事業者にとって影響が大きく、制度の根幹をなすものが「HACCPの義務化」「営業許可制度の見直し」「食品リコール報告義務」です。

ここからは、これら3つに絞って解説することで、現行法における実務上の要点を的確に把握できるようにします。

HACCP(ハサップ)による衛生管理の制度化

HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、「危害要因分析に基づく重要管理点」の意味を持つ食品衛生管理手法です。食品の製造・加工・調理の過程で発生し得るリスクを科学的に分析し、それらを予防的に管理する仕組みです。

このHACCPは、国際的な食品安全基準を定めるCodex(コーデックス)によってガイドラインが整備されています。 Codex(正式名称:Codex Alimentarius Commission)は、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が共同で設立した食品規格委員会で、国際的な食品安全のガイドラインや基準を策定する機関です。多くの国がCodexの指針をもとに制度を構築しています。

Codexの7原則は、以下のとおりです。

原則1 危害要因の分析

原則2 重要管理点の決定

原則3 管理基準の設定

原則4 モニタリング方法の設定

原則5 改善措置の設定

原則6 検証方法の設定

原則7  記録と保存方法の設定

参考:食品衛生法等の一部を改正する法律の概要 改正の概要|厚生労働省

従来の「終わった後の抜き取り検査」に頼る方式から、「プロセス全体を監視して未然に防ぐ」方式へと大きく転換された点が特徴です。

2021年の法改正により、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに基づく衛生管理が義務付けられました。これにより、国際的な食品安全基準への対応と、国内のリスク低減が同時に進められています。

HACCPによる衛生管理の制度化と並行して、食品用器具・容器包装に関する安全性の確保も強化されました。

平成30年(2018年)に公布された食品衛生法等の一部改正では、HACCP制度化とあわせて「ポジティブリスト制度」の導入が定められ、令和2年(2020年)6月1日から施行されています。このポジティブリスト制度では、合成樹脂製の器具や容器包装に使用できる物質を、安全性が確認されたものに限定しています。リストに掲載されている物質のみ使用が認められ、それ以外の物質は原則として使用できません。

食品包装資材を扱う事業者にとっては、取り扱う製品がこの制度に適合しているかの確認が不可欠であり、今後も制度の動向を注視することが求められます。

制度の概要や事業者に求められる対応ポイントについては、以下の特集記事で詳しく解説しています。

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度とは?対象や事業者の対応方法も解説

営業許可制度の見直し

食品を取り扱う事業者は、従来から業種ごとに都道府県などの許可を受ける必要がありましたが、法改正により許可制度の対象が再整理されました。2021年6月の改正で、34業種あった旧営業許可業種は「32業種 + 届出業種」に再編され、基準の明確化と実務負担の軽減が図られました。

また、営業許可の有効期間が「原則5年」に変更され、定期的な見直しや改善が求められるようになりました。これにより、継続的な衛生管理の維持と行政による監督体制の強化が実現されています。

食品リコール報告の義務化

食品に健康被害のおそれがあると判明した場合、事業者が自発的に市場から商品を回収する「自主回収(リコール)」は、以前は任意の報告制度でした。しかし、2021年の法改正により、一定の条件下で行政への報告が義務化されました。これにより、消費者への情報提供の迅速化、同種事案の再発防止、行政による対応の透明性確保が期待されます。

報告を怠った場合には罰則の対象となるため、事業者はリスク評価と記録管理の体制整備が求められています。

4. 事業者が守るべき義務と対応について

続いては、食品事業者が抑えるべき食品衛生法のポイントを8つに分けて解説します。

今回取り上げる内容は、食品衛生法改正以降、食品関連事業者に特に求められるようになった実務上の重要ポイントを整理したものです。

①食品等事業者の責務

食品等事業者は、自らが取り扱う食品や添加物、器具、容器包装などが、人の健康を損なうことのないよう、常にその安全性を確保する責任があります。これは食品衛生法第三条に明記されている基本的な考え方であり、すべての事業者が順守すべき大前提です。

「第三条

食品等事業者(食品若しくは添加物を採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、若しくは販売すること若しくは器具若しくは容器包装を製造し、輸入し、若しくは販売することを営む人若しくは法人又は学校、病院その他の施設において継続的に不特定若しくは多数の者に食品を供与する人若しくは法人をいう。以下同じ。)は、その採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、販売し、不特定若しくは多数の者に授与し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装(以下「販売食品等」という。)について、自らの責任においてそれらの安全性を確保するため、販売食品等の安全性の確保に係る知識及び技術の習得、販売食品等の原材料の安全性の確保、販売食品等の自主検査の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

② 食品等事業者は、販売食品等に起因する食品衛生上の危害の発生の防止に必要な限度において、当該食品等事業者に対して販売食品等又はその原材料の販売を行つた者の名称その他必要な情報に関する記録を作成し、これを保存するよう努めなければならない。

③ 食品等事業者は、販売食品等に起因する食品衛生上の危害の発生を防止するため、前項に規定する記録の国、都道府県等への提供、食品衛生上の危害の原因となつた販売食品等の廃棄その他の必要な措置を適確かつ迅速に講ずるよう努めなければならない。」

引用:食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)|e-GOV法令検索

具体的には、食中毒を防ぐための衛生管理、従業員への衛生教育の実施、万が一の事故発生時に迅速な対応をとるための体制整備などが挙げられます。また、仕入れ先や製造委託先に対しても、必要に応じて適切な管理を行い、責任の所在を明確にすることが求められます。

②食品・添加物に関するルール

食品衛生法では、使用できる食品添加物を「指定添加物」として定め、その成分や使用条件を厳しく規制しています。事業者は、自社で使用している添加物が適法なものであるかを確認し、必要に応じて表示や製造記録の管理を徹底する必要があります。

また、無許可での添加物の製造や輸入は禁止されており、違反した場合は罰則が科されます。例えば、輸入品の場合は厚生労働省による審査や検査を経た上で、食品衛生上の安全性が確認されている必要があります。近年では、天然由来成分を使用した添加物などへの関心も高まっており、安全性とともに消費者ニーズにも配慮した製品開発が求められています。

③器具・容器包装に関するルール

食品に直接接触する器具や容器包装についても、食品衛生法に基づいた安全基準があります。例えば、溶出試験や耐熱試験などにより、食品への有害物質の移行がないかを検査しなければなりません。特にプラスチック製品では、使用する材料や添加剤によって、溶出する化学物質が異なります。そのため、事前のリスク評価が欠かせません。

また、製造業者だけでなく、包装を取り扱う販売事業者にも表示義務やトレーサビリティの確保が求められるケースもあります。2020年以降は、環境配慮の観点から生分解性プラスチックなど新素材の使用も増加していますが、これらの素材も食品衛生法の適用対象であることを忘れてはなりません。

④表示に関するルール

食品表示法とも密接に関連するこのルールでは、原材料、賞味期限、保存方法、栄養成分など、正確な情報を消費者に提供することが求められます。特にアレルゲン表示や添加物表示については、誤表示が健康被害に直結するため、重大な事故につながる可能性があります。事業者は、商品パッケージやウェブサイト、メニュー表など、消費者が目にするあらゆる媒体において、法律に準拠した正確な表示を行う必要があります。

また、近年では「機能性表示食品」や「栄養機能食品」といった表示に関する規定も増えており、科学的根拠のある情報提供や届出制度の遵守も重要なポイントとなります。

⑤営業に関するルール

食品衛生法では、乳製品や特定の添加物など、衛生上特に注意が必要な食品を製造・加工する営業者に対し、「食品衛生管理者」の配置が義務付けられています。食品衛生管理者は、製造現場における違反の防止や衛生管理体制の整備、従業員への指導を担い、事業者に対しても必要な助言を行います。また、営業者は管理者の意見を尊重する義務があります。

営業を行う施設については、厚生労働省令や都道府県条例に基づき、清潔保持や衛生的な工程管理など、基準に沿った管理が求められます。公衆衛生への影響が大きい営業には、都道府県知事の許可が必要で、施設が基準に適合していない場合や重大な違反があった場合には、営業停止や許可取消といった処分を受ける可能性があります。

さらに、違反や危害のおそれがある場合には、営業者に対して製品の回収や廃棄、広告の是正措置などが命じられることもあり、食品の安全確保を目的とした厳格な管理体制が構築されています。

⑥監視・指導に関するルール

食品衛生法の第六章監視指導では、食品や添加物などに起因する食中毒の拡大防止や、広域流通する食品の違反を防ぐため、国と都道府県等が連携して監視指導を行う体制が定められています。厚生労働大臣は、関係機関が連携できるよう「広域連携協議会」を設けることができ、協議の結果は構成員が尊重すべきものとされています。監視指導の基本方針は「指針」として厚生労働大臣と内閣総理大臣が策定し、監視体制や重点項目、機関連携のあり方などを明示します。

国はこの指針に基づき、毎年度「輸入食品監視指導計画」を定め、重点監視対象や自主衛生管理の指導内容を公表します。都道府県も同様に「食品衛生監視指導計画」を策定し、地域の実情に応じた計画に基づいて監視指導を実施します。これらの計画や実施状況は、公表・報告が義務付けられており、透明性の高い運用が求められています。

⑦食品添加物公定書

食品添加物の品質や試験方法を標準化するために、厚生労働省が発行しているのが「食品添加物公定書」です。この公定書には、使用可能な添加物の一覧、純度試験法、保存方法などが記載されており、事業者はこの内容に従って品質管理を行う必要があります。食品衛生法の条文では、食品添加物公定書に関して以下のように定められています。

「第二十一条

内閣総理大臣は、食品添加物公定書を作成し、第十三条第一項の規定により基準又は規格が定められた添加物及び食品表示法第四条第一項の規定により基準が定められた添加物につき当該基準及び規格を収載するものとする。」

引用:食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)|e-GOV法令検索

公定書は数年ごとに改訂されており、最新の内容を常に確認することが、リスク回避の観点からも不可欠です。

⑧食品包装資材ディーラーの立場と対応

食品包装資材を取り扱うディーラー(販売事業者)も、食品衛生法の枠組みにおいて重要な役割を担っています。特に「器具・容器包装に関するルール」に準拠した製品の提供、法令対応に関する情報提供、トレーサビリティの確保といった点で、食品関連事業者の衛生管理体制を支える立場にあります。

食品包装資材ディーラーが注意すべき主なポイントは以下のとおりです。

製品の適法性確認

自社が取り扱う容器包装が、食品衛生法に基づく「器具・容器包装の規格基準(厚労省告示第370号等)」に適合しているかを確認。必要に応じて成分表示や試験成績書の提供が求められます。

溶出試験や材質表示への理解

特にプラスチック製品では、溶出する化学物質に対する規制が強化されています。仕入先やメーカーと連携し、最終ユーザー(食品事業者)への説明責任を果たせる情報提供体制を構築しましょう。

リコール時の対応フロー整備

万が一、包装資材に不具合があった場合、速やかな情報提供と回収協力が求められます。HACCPの義務化以降は、食品メーカー側も包装資材のトレーサビリティを重視しており、販売記録や納入履歴の管理が不可欠です。

環境配慮素材の提案

「プラスチック資源循環促進法」施行以降、再生素材や生分解性プラスチックへのニーズが高まっています。環境対応と法令順守を両立させた製品を選定・提案することも、顧客への付加価値提供に直結します。

食品表示や販促物との整合性

場合によっては、食品包装資材に印刷される表示内容(例:アレルゲン表示、栄養情報など)について、食品表示法との整合性を意識する必要があります。顧客と連携し、誤表示リスクを抑える支援もディーラーとしての責任の一つです。

食品包装資材ディーラーは、製造業者と食品提供者の橋渡し役として、「安全」と「安心」を実現するためのキープレイヤーといえます。単なる商品の流通だけでなく、法令知識と品質保証体制をもって、衛生管理支援のパートナーとなることが期待されています。

5. 食品衛生法の最新の改正動向

食品衛生法は、時代の変化や社会的ニーズに応じて、定期的に見直しが行われています。近年では、国際的な基準への対応や環境問題への配慮といった観点からも、制度の強化が進んでいます。

ここでは、事業者に特に影響の大きい2つの改正動向について見ていきましょう。

2021年のHACCP(ハサップ)完全義務化

先程も紹介したとおり、2021年6月、すべての食品等事業者に対してHACCPに基づく衛生管理の実施が完全義務化されました。これにより、従来の「経験則」による管理から、「科学的根拠」に基づいたリスク管理への転換が求められるようになりました。大規模な事業者はもちろん、個人経営の飲食店や小規模製造業者も対象となるため、事業規模に応じた柔軟な対応が重要です。

制度導入にあたっては、保健所などの指導や様式を活用し、現場に即した形でHACCPを定着させましょう。

プラスチック資源循環促進法

2022年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」も、食品衛生法と密接に関連する制度の一つです。この法律は、プラスチックの製造・使用・廃棄の各段階において、資源循環や環境負荷の低減を図ることを目的としています。

食品事業者にとって重要なのは、テイクアウト容器やカトラリーなど、使い捨てプラスチック製品の使用実態に応じて、削減や代替素材への切り替えが求められる点です。また、容器包装の設計段階から再利用・リサイクルしやすい形状を検討するなど、製品設計にも配慮が必要となっています。

この法律により、環境配慮と食品安全の両立がより重要なテーマとなりました。衛生面とサステナビリティのバランスを意識しながら、対応方針を見直していきましょう。

6. 食品衛生法の将来的な動向

食品を取り巻く環境は、国際的な衛生基準の整備や観光客の増加などにより、大きく変化し続けています。食品衛生法も、こうした動向に対応するかたちで、今後さらなる改正や対応強化が見込まれています。

ここでは、国際基準やインバウンド需要の観点から、今後注目されるポイントを見ていきましょう。

今後の課題

日本の食品衛生法は、国際標準であるCodex規格を参考にしており、今後も国際調和を図りながら制度整備が進められると考えられます。特に、輸出を行う食品企業にとっては、海外の衛生要件に対応するためにも、より厳格な管理体制が求められる場面が増えていくでしょう。

また、訪日外国人(インバウンド)の増加に伴い、飲食店や宿泊施設における衛生管理レベルの向上も重要です。多様な文化や食習慣を持つ旅行者に安心して食事を楽しんでもらうためには、清潔な環境の提供はもちろん、アレルゲン表示や多言語対応など、より実践的な対応力が必要になります。

今後の食品衛生法では、こうした国際化・多様化に対応した規制やガイドラインの整備が進み、事業者に求められる責任や対応範囲がさらに広がることが予想されます。変化を見越した準備を早めに進めておきましょう。

デジタル技術の活用

将来的な食品衛生管理において、デジタル技術の導入は不可欠な要素となります。

例えば、HACCPに基づく記録の電子化や、センサーによる温度管理の自動化、クラウドを利用した衛生管理プラットフォームの活用などが進んでいます。これにより、従来は紙ベースで行われていた煩雑な記録業務が効率化されるだけでなく、リアルタイムでの異常検知や、複数拠点の一元管理が可能となります。食品ロスの削減や、トレーサビリティの強化にもつながり、衛生だけでなく経営効率の向上にも貢献するでしょう。

今後の法改正では、こうしたデジタル技術を活用することを前提とした新たな基準や助成制度の整備も期待されています。中小事業者にとっても導入のハードルが下がるよう支援が進められており、今のうちから情報収集と準備を始めておくとよいでしょう。

7. まとめ

食品衛生法は、食品の製造から販売、提供に至るあらゆる段階で「安全・安心」を確保するための中核的な法律です。HACCPの義務化やリコール報告制度の導入など、近年の法改正は、食品等事業者に対してより高い衛生管理の水準を求めています。これにより、単なる法令順守だけでなく、科学的根拠に基づいたリスク管理や、迅速かつ透明な対応が実務上求められるようになっています。

事業者が押さえておくべき7つのルールでは、日常の衛生管理、表示・添加物・容器包装に関する対応、そして監視・指導体制や公定書に基づく品質管理まで、幅広い分野への理解と実行力が不可欠です。

また、今後は国際基準やインバウンド需要、さらにはデジタル技術の活用がより一層重要なテーマとなります。食品衛生法の動向を継続的に把握し、変化に柔軟かつ前向きに対応できる体制づくりが、企業の信頼と持続可能な成長につながります。

さらに、食品包装資材を取り扱うディーラーにとっても、これらの変化は無関係ではありません。自社で取り扱う資材が法令に準拠しているかを確認し、取引先の食品事業者が適切な衛生管理を行えるよう、品質保証や情報提供に積極的に取り組む必要があります。特に環境問題や表示リスクに対する意識が高まる中で、「法令対応+顧客支援」の両立が、今後の競争力のカギとなります。

「食の安全」を社会に届ける責任と使命を果たすために、制度の正しい理解と現場での実践が何より重要です。

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