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食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度とは?対象や事業者の対応方法も解説

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食品衛生法において、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度が導入されました。経過措置が設けられていますが、2025年5月末で終了してしまいます。 経過措置終了までに、食品に携わる業界の企業では、ポジティブリスト制度の内容に合わせて対応していかなければなりません。

ただ、これまでのネガティブリスト制度とはどのように違うのか、対応方法などが分からず模索中の企業も多いでしょう。 本記事では、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について、詳しく解説していきます。

ポジティブリスト制度とは

最初に、ポジティブリスト制度とはどのような内容の制度なのか見ていきましょう。

食品用器具・容器包装に関するルール

ポジティブリスト制度は、食品用器具や食品の容器包装に関するルールを定めたものです。HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理を制度化したもので、アメリカやEU諸国などをはじめとして多くの国で導入されています。

日本では、2018年に食品衛生法が改正されてポジティブリスト制度の内容が盛り込まれ、2020年6月に施行されました。以前までは業界団体の自主規制で対応してきましたが、諸外国に合わせる形で制度化されたという具合です。

厚生労働省および消費者庁のホームページでは次のように記載されています。

「平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律により、食品用器具・容器包装について、安全性を評価した物質のみを使用可能とするポジティブリスト制度を導入しました(令和2年6月1日施行)。」

引用元:「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年5月31日まで)」厚生労働省

「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年6月1日以降)」消費者庁

食品用器具や容器包装に使用可能な素材を列挙

ポジティブリスト制度では、安全性が確認されている素材をあらかじめリスト化して列挙しています。原則として食品用器具や食品の容器包装への使用を禁止し、リストに列挙されている素材のみ使用を認める格好です。

食品用器具や食品の容器包装に使用できる素材は限定されてしまいますが、高い安全性を確保できます。

ネガティブリスト制度との違い

ポジティブリスト制度とは対照的な制度として、ネガティブリスト制度というものがあります。ネガティブ制度は、使用を禁止する素材をリスト化して列挙するというものです。

原則としてすべての素材の使用を許可し、リストに含まれる素材のみ使用が禁止されます。そのため、ポジティブリスト制度とは逆に、使用できる素材の範囲が広いのが特徴です。

以前までは、日本でもネガティブリスト制度が採用されていました。

しかし、ネガティブリスト制度のもとでは、危険性が確認されていない素材は使用が禁止されることはありません。未知の素材への対応が難しいということで、ポジティブリスト制度に改正されました。

ポジティブリスト制度の対象

ポジティブリスト制度では、何を規制対象としているのか見ていきましょう。

食品用器具

食品用器具がポジティブリスト制度の対象になり、次のように定義されています。

「器具とは、飲食器、割ぽう具その他食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列、授受又は摂取の用に供され、かつ、食品又は添加物に直接接触する機械、器具その他の物をいう。」

引用元:食品用器具・容器包装ポジティブリスト制度について 一般財団法人化学研究評価機構

具体的には、食品を盛りつける食器や調理に使用する鍋やフライパン、おたま、ヘラ、ラップ、包丁などが該当します。食品に直接触れるものが含まれると捉えてよいでしょう。

食べ物だけでなく、飲み物に関しても直接触れるものは食品用器具です。

例えば、グラスやカップなどが該当します。また、紙コップにドリンクが注がれるタイプの自動販売機で使用される紙コップも同様です。

容器包装

容器包装も対象で、次のように定義されています。

「食品又は添加物を入れ、又は包んでいる物で、食品又は添加物を授受する場合そのままで引き渡すものをいう。」

引用元:食品用器具・容器包装ポジティブリスト制度について 一般財団法人化学研究評価機構

具体的には、弁当の容器やペットボトル、牛乳パック瓶などが該当します。レトルト食品の容器や缶詰の缶、惣菜のトレイなども容器包装です。

物質

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の対象となる物質は合成樹脂です。合成樹脂とは、プラスチックと熱可塑性のあるエラストマーを指します。

熱可塑性とは、熱を加えると変形し、冷やすと元に戻る性質のことです。主にポリエチレンやポリスチレンなどが、熱可塑性プラスチックの例として挙げられます。

プラスチックの中でも、メラニン樹脂やフェノール樹脂などは熱可塑性のない素材です。ですが、どちらの性質のプラスチックも合成樹脂に含まれます。

熱可塑性エラストマーは、ゴムと樹脂の中間的な性質を持つ素材のことです。熱可塑性エラストマーの例としては、ポリエチレンエラストマーやスチレン・ブロック共重合体などが挙げられます。

ゴムに関しては、熱可塑性のないエラストマーに分類されるため、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の対象外です。

また、食品に接触しない部分は扱いが異なります。人の健康を損なうおそれのない量として、厚生労働大臣が定める量にとどまれば対象外です。具体的には、食品1kgあたり0.01mgまでなら規制を受けません。

事業者

ポジティブリスト制度の対象となる事業者は、原材料メーカーと合成樹脂製の器具や容器包装を製造しているメーカーです。説明の努力義務や自治体への届出が義務付けられています。

ポジティブリスト制度への対応方法

ポジティブリスト制度へ対応するためには、どのようなことを済ませておけばよいのか見ていきましょう。

情報伝達の環境整備

原材料製造事業者が容器等製造事業者に原材料を納品し、容器等販売事業者を経て食品製造販売事業者に届きます。その一連の流れの中で、情報伝達できる環境を整備しておかなければなりません。

容器等製造事業者には、容器等販売事業者から要請があった場合には説明する努力義務が設けられています。

情報伝達できる環境が整備されていないと、使用が禁止されている素材を知らずに使用してしまうおそれがあります。

自治体への届出

食品衛生法により、合成樹脂製の器具や容器包装を製造する事業者は自治体へ営業の届出が必要です。また、ポジティブリストに記載されていない素材を使用した容器を回収する際にも、届出が求められています。

経過措置が設けられていますが、届出が必要でまだ済ませていない事業者は早めに済ませておきましょう。

一般衛生管理の基準の遵守

一般衛生管理とは、食品製造の現場で遵守しなければならない衛生管理のことです。器具の洗浄やメンテナンス、防虫対策、従業員の教育訓練などが挙げられます。

ポジティブリスト制度においては、容器などの製造事業者に対しても一般衛生管理が義務付けられるため、対応が必要です。

適正製造管理規範の遵守

適正製造管理規範は、食品衛生法施行規則 第66条の5に規定されています。合成樹脂製の容器を製造する事業者に適正製造管理規範が義務付けられるため、対応が必要です。

商社の立場から見たポジティブリスト制度対応ポイント

ポジティブリスト制度により、包装資材を取り扱う商社(ディーラー)は、単なる流通経路としての役割にとどまらず、ユーザーと仕入先をつなぐ情報伝達の要となります。ユーザーからの問い合わせや書類提出依頼が商社に集中するケースも多いため、正確かつ迅速な対応体制が求められます。

商社の具体的な対応例

仕入先に対して

  • 対象資材ごとに、ポジティブリスト適合宣言書や安全性証明書を取得
  • 海外製品や複合素材品は、事前に資料の整備状況を要確認

ユーザーに対して

  • 該当資材がポジティブリスト適合品であることを明確に説明できるよう準備
  • 「この資材はポジティブリストに対応していますか?」といった現場の問い合わせにも対応できる体制づくり
  • メーカー発行資料の提示方針を社内で統一しておく

社内体制の整備

  • 仕入先から収集した証明書・宣言書を製品・品番別に保管
  • 営業や購買など、社内関係部門との役割分担を明確に
  • 営業マニュアルや社内FAQとして対応方針を整理

商社として特に注意すべき点

「メーカーでないから関係ない」と誤解しがちですが、実務上、ユーザーへの説明責任は商社に及ぶケースが多くあります。資料が未整備だった場合、ユーザーからの信頼を失うリスクがあるため、社内外での連携と事前準備が非常に重要です。

法的な義務だけでなく、商取引上の信頼維持という観点からも、商社としての対応は必須と言えるでしょう。

ポジティブリスト制度のメリットと注意点

ポジティブリスト制度が施行されることで、メリットとなる面もあれば注意しなければならない点もあります。

メリット

ポジティブリスト制度により、食品用器具や容器包装への使用の可否が分かりやすくなります。新しい成分でも、ポジティブリストに掲載されていれば、安心して使用できるのがメリットです。ネガティブリストの場合と違って、使用すべきかどうか迷うことがありません。

より安心安全な状態で食品を消費者に提供できます。

注意点

ポジティブリスト制度には経過措置期間が設けられていますが、2025年5月31日に終了を迎えます。現時点でまだ対応できていない企業は、経過措置期間が終了するまでの間に必要な対応を済ませておかなければなりません。

食品衛生法83条には「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と罰則も規定されています。経過措置が終了しても対応できていない場合には、罰則の対象になる可能性もあるため注意が必要です。

まとめ

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度は、列挙されている素材のみを使用可能とするものです。

アメリカやEUなどではすでに導入されており、日本でも2020年に導入されました。対象となる素材はプラスチックと熱可塑性のあるエラストマーです。

包装資材を扱う商社やディーラーには、ユーザー様へ正しい情報を伝達する義務があります。

手間はかかりますが、食の安心安全のためには必要な制度です。未対応の企業は、経過措置期間が終了するまでの間に対応を済ませておきましょう。

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