急上昇検索キーワード

“なんとなく”で選んでない?バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの本当の違い

1,958View

近年、持続可能な社会の実現に向けて、プラスチック素材のあり方が見直されつつあります。

特に包装資材の分野では、環境に配慮した素材を取り入れることで、企業のブランド価値や信頼性を高める取り組みが活発になっています。

そうした流れの中で注目されているのが、「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」です。

どちらも“環境にやさしいプラスチック”として注目されていますが、その仕組みや特徴、活用の場面には違いがあります。

素材を正しく理解し、提案先のニーズに合った選択肢を提示できるかどうかは、今後ますます重要になってくるでしょう。

本記事では、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの違い、活用事例まで分かりやすく解説します。

1. 生分解性プラスチックとは?

近年、環境負荷を低減する素材として注目されているのが「生分解性プラスチック」です。

生分解性プラスチックは、一定の条件下で微生物の働きにより、最終的に水と二酸化炭素などの自然物質に分解される性質を持っています。

分解が進む環境(例:土壌、海洋、産業用コンポストなど)は素材ごとに異なりますが、適切な条件下で分解され、最終的には自然由来の物質に戻るという特長から、特に使い捨て用途を中心に導入が進められています。

ただし、導入にあたっては、分解条件・コスト・処理インフラの整備といった観点からの検討が不可欠です。

包装資材としての生分解性プラスチックは、主に以下のような素材が使用されています。

PLA(ポリ乳酸)

PLA(ポリ乳酸)は、植物由来(トウモロコシやサトウキビなど)のデンプンから製造される生分解性プラスチックで、高温・高湿度のコンポスト環境下で分解されます。

※PLAは「生分解性プラスチック」でもあり、植物原料からできた「バイオマスプラスチック」でもあります。 

加工性に優れており、食品容器やカトラリー、包装フィルムなどに広く利用されています。

ただし、土壌や海洋では分解しにくい(特に低温・乾燥環境では分解がほとんど進まない)という性質もあるため、使用後の処理環境(産業用コンポスト等)を考慮する必要があります。

燃焼時のCO2は植物由来の炭素であるため、カーボンニュートラルに近いとされることから、環境にやさしい素材として注目されています。

GREEN PLANET®(グリーンプラネット)

カネカ社が開発した100%植物由来のバイオマス原料を使用して作られた海洋生分解性プラスチック(PHBH)です。

※PLAと同じく、「生分解性プラスチック」でもあり、植物原料からできた「バイオマスプラスチック」でもあります。 

自然界の海水や土壌に存在する微生物によ®分解され、最終的には二酸化炭素と水になります。

特に海水や土壌などの自然環境下でも分解が進むことから、海洋汚染やマイクロプラスチック問題の軽減につながる素材として注目されており、従来のプラスチックに比べ、分解速度が早く、環境中に残りにくいのが大きな特長です。

CAFBLO®(キャフブロ)

ダイセル社が開発した木材や綿花由来のセルロースを原料とする「酢酸セルロース」に、非フタル酸系可塑剤を加えた「バイオマスプラスチック」であると同時に「生分解性プラスチック」にも該当する素材のことです。

再生可能資源を活用しつつ、品質・安全性・加工適性を備えたこの素材は、“次世代スタンダード”の可能性を秘めた使い捨てプラスチック代替素材として注目されています。

2. バイオマスプラスチックとは?

バイオマスプラスチックは、原料の一部または全部に植物などの再生可能資源(バイオマス)を使用して製造されたプラスチックです。

バイオマスプラスチックの利点は、化石資源の使用量削減とCO2排出量の削減にあります。

焼却時に発生するCO2は、植物が成長過程で吸収したものであるため、理論上カーボンニュートラルとされています。

代表的な素材は以下のとおりです。

バイオPE(バイオポリエチレン)

バイオPEは、サトウキビなどの植物から得られるバイオエタノールを原料に製造されるポリエチレンです。バイオエタノールを脱水して得られるバイオエチレンを重合することで、石油由来のPEと化学構造が同一のポリエチレンが作られます。

そのため、物性や外観、加工適性などは石油由来PEと全く同じであり、既存の製造・成形設備をそのまま利用可能です。食品容器、包装材、レジ袋など、幅広い用途に使用されています。

生分解性はありませんが、化石資源の使用削減やライフサイクル全体でのCO₂排出量の削減に貢献します。

特に大手飲料メーカーなどが積極的に採用しており、カーボンニュートラル社会の実現に向けた注目素材の一つです。

バイオPET

バイオPETは、石油由来PETと同じ構造を持つポリエチレンテレフタレートで、原料の一部であるエチレングリコール(EG)を植物由来資源から製造することで作られます。もう一つの原料であるテレフタル酸(PTA)は現在も石油由来が一般的であるため、バイオPETは現在のところ最大約30%がバイオ由来です。

物理的特性や外観、耐久性、加工性は石油由来PETと同一であり、飲料ボトルや繊維製品、フィルムなど多岐にわたる用途で使用されています。PETボトルとしての再生(リサイクル)も可能で、既存の回収・再資源化システムにそのまま対応できます。

将来的にはPTAも植物由来に置き換えることで100%バイオPETの実現を目指す動きが進められています。

バイオPP

バイオPPは、再生可能な油脂(植物油、廃食用油、トール油など)を原料として、ポリプロピレン(PP)のモノマーであるプロピレンを化学合成することで製造されるポリプロピレンです。これらのバイオ原料は水素化・クラッキングを経て石油由来ナフサと同等の成分に変換され、従来のPP製造プロセスに投入されます。

現在は石油由来原料とバイオ原料を混合(マスバランス方式)する形での生産が主流であり、製品に割り当てられるバイオ由来比率は製造時の配合に依存します。

機械的特性や使用方法は石油由来PPと同じであり、自動車部品、包装材料、家電などの用途にそのまま利用できます。欧州を中心に導入が進んでおり、CO₂排出量削減と持続可能性向上の観点から、今後の市場拡大が期待されています。

3. 生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの違い

「生分解性」と「バイオマス」は異なる概念です。

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックを総称し、バイオプラスチックと呼ばれます。

2つの違いを詳しく見ていきましょう。

主な特徴

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの主な特徴を見ていきましょう。

両者は混同されがちですが、以下のような違いがあります。

生分解性プラスチック バイオマスプラスチック
主な原料 再生可能資源(トウモロコシ、糖類など)や石油由来のものも存在 主に植物由来(サトウキビ、トウモロコシ、廃油など)
リサイクル性 基本的に不可・非推奨 可能
生分解性 あり(環境により速度は異なる) ない場合も多い(例:バイオPE、バイオPETは非分解性)

上表のとおり、バイオマスプラスチックは植物などを原料としたプラスチックで、生分解性があるとは限りません。

一方、生分解性プラスチックは微生物によって分解されますが、必ずしも植物由来ではない場合もあります。

資材選定時には、利用シーンや最終処理の流れを踏まえ、適切な素材を選ぶことが求められます。

メリット・デメリット

生分解性プラスチック・バイオマスプラスチック、両者のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット デメリット
生分解性プラスチック 生分解性プラスチックは、特定の微生物の酵素作用によって、自然界で水とCO₂に分解されます。分解速度や条件は素材によって異なりますが、理論的には最終的に自然に還ることができる。 特定の条件がそろわないと分解が進まない。多くの国・自治体では、通常のごみ処理ルートで適切に分解できるインフラがまだ整っていないため、誤った処理によってかえって環境負荷が増す場合もある。また、多くの生分解性プラスチックは、高価格・低耐熱性・機械的強度の低さといった課題があるが、技術の進展により、これらは少しずつ改善されつつある。
バイオマスプラスチック 原料の一部または全部に植物などの再生可能資源(バイオマス)を使用して製造されたプラスチックのため、化石資源の使用を削減でき、カーボンニュートラルの観点から地球温暖化防止にも寄与している。 バイオマスプラスチックの中には、生分解性を持たないものがほとんどで、これらは従来のプラスチックと同じように、適切に処理されないと環境中に残る。さらに、原料の生産が農地や水資源を圧迫する可能性があり、食料との競合が問題視されることもあります。

4. 生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの活用事例

続いては、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの活用事例を見ていきましょう。

レジ袋

近年、環境配慮の観点から、スーパーやコンビニなどで生分解性プラスチックやバイオマスプラスチック製のレジ袋が導入されています。

バイオマス由来のレジ袋は、従来の石油由来プラスチックと同様の強度を持ちながら、植物由来でCO2排出量の削減に貢献します。

また、生分解性のものは、特定の条件下で自然に分解されるため、ポイ捨てによる環境汚染の抑制にも期待されています。

店舗によっては、袋にバイオマスマークを表示し、環境配慮の姿勢をアピールしています。

飲食店のカトラリー

生分解性やバイオマス素材を使ったフォークやスプーンなどのカトラリーは、テイクアウトやデリバリーサービスの普及に伴い、飲食店での利用が広がっています。

従来のプラスチック製品と比べて廃棄時の環境負荷が少なく、店舗のエコ意識をアピールできる点も魅力です。

例えば、生分解性カトラリーは使用後に堆肥化施設で処理することで、廃棄物の資源循環に寄与します。

手触りや耐久性の改良も進んでおり、使い心地も年々向上しています。

企業のCSR活動

多くの企業がCSR(企業の社会的責任)活動の一環として、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックの活用を進めています。

例えば、環境配慮型ノベルティグッズの配布や、社内備品の切り替え、製品パッケージの見直しなどです。

これにより企業のサステナビリティへの姿勢を明確に打ち出し、顧客や投資家からの評価向上にもつながります。

また、国際的な環境基準への対応にもなり、ブランドイメージ強化にも貢献します。

今後は、自治体や教育機関と連携し、環境教育や啓発活動の一環として両素材を活用する事例も増えると見込まれます。

実際に、学校給食で使用されるカトラリーやイベント会場の簡易容器などにおいて、環境配慮型素材への切り替えが進んでおり、これが社会全体の意識改革にもつながっています。

包装資材ディーラーにとっても、こうした新たな導入先の開拓はビジネスチャンスになり得ます。

5. 生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの今後の展望

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの現状の課題や、今後の展望を紹介します。

現状の課題

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックは、環境にやさしい反面、それぞれに課題も抱えています。

そのため、どちらの素材も「万能ではない」ことを理解し、適材適所で使い分ける必要があります。

例えば、海洋への流出リスクがある用途には生分解性素材を、長期間の使用や耐久性が求められる場面にはバイオマスプラスチックをといったように、利用環境に応じた判断が不可欠です。

導入時にはコストやインフラ面だけでなく、製品ライフサイクル全体の視点を持つことが求められます。

近年では、既存のPETリサイクル工程と整合性の取れたバイオPETのように、既存インフラを生かした素材が注目を集めています。

今後は、ライフサイクル全体を見据えた提案が求められ、カーボンフットプリント(商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み)の見える化なども導入判断の基準となっていくでしょう。

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチック、両者の活用はさらに進むと考えられていますが、以下のような課題も存在します。

コスト 石油由来のプラスチックと比べて割高であるため、コストダウンが普及の鍵となる。
制度やインフラの整備 分解可能な環境の確保や認証制度の導入、消費者への理解促進が求められる。
素材開発 耐久性と分解性のバランスを両立した素材開発が進められており、技術革新による用途拡大が期待されている。

近年ではバイオプラスチックの性能向上も進んでおり、従来の課題とされていた強度や透明性の面でも改善が見られています。

各国での法規制強化や大手企業の脱プラスチック宣言などもあり、今後はさらに用途が広がっていくと考えられます。

特に欧州では、生分解性素材のラベル表示義務化や、堆肥化可能であることの認証制度整備が進んでおり、日本でも同様の流れが期待されています。

今後の展望

政府の「プラスチック資源循環戦略」では、2030年までにバイオマスプラスチックの導入量を約200万トンに拡大する目標が掲げられています。

包装資材ディーラーとしても、この流れを読み取り、お客様に対する積極的な素材提案をすることが必要です。

さらに、グローバル市場ではESG投資やカーボンニュートラルへの関心の高まりにより、環境配慮型素材の導入が企業価値向上に直結する傾向が強まっています。

生分解性・バイオマス素材の知識や導入事例を積極的に収集・発信することが、差別化と信頼構築につながるでしょう。

今後は単なる素材提供にとどまらず、持続可能な包装設計全体をサポートできる体制づくりが、業界の競争力を左右する鍵となります。

6. まとめ

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックは、どちらも持続可能な社会を実現するための重要な素材です。

ただし、その仕組みや性質には違いがあるため、「なんとなく環境によさそう」と思うだけでは正しい理解にはつながりません。

今後はこれらの素材の特性を正しく理解した上で、ビジネスにおいてどう活用していくかが鍵になります。

この記事の関連記事

【丸五2026年商品展示会】 PAST TO THE FUTURE へ行ってきました!!

株式会社丸五、100年の進化と次世代への挑戦 2025年の取材から1年。厨房靴の「丸洗い」という提…

株式会社丸五、100年の進化と次世代への挑戦 2025年の取材から1年。厨房靴の「丸洗い」という提…

【弘進ゴム株式会社 2026年春展示会】へお邪魔してきました!!

現場の足元を科学する「弘進ゴム」の世界! スーパーのバックヤード、飲食店、そして食品工場。水や油で…

現場の足元を科学する「弘進ゴム」の世界! スーパーのバックヤード、飲食店、そして食品工場。水や油で…

冷凍でもおいしいを実現!急速冷凍とパッケージ設計の最新知識

冷凍食品市場は年々拡大し、家庭用・業務用を問わず急速冷凍の技術が広く活用されるようになっています。共…

冷凍食品市場は年々拡大し、家庭用・業務用を問わず急速冷凍の技術が広く活用されるようになっています。共…

コンポストとは?食品業界の循環型ビジネスに広がる活用と展望

食品業界ではいま、SDGsや資源循環の観点からコンポストへの関心が高まっています。 コンポストとは…

食品業界ではいま、SDGsや資源循環の観点からコンポストへの関心が高まっています。 コンポストとは…

脱プラ時代に注目、知られざるサステナブル素材『バガス』とは?

脱プラスチックや脱炭素の流れが強まる中、食品容器の分野で新たに注目を集めているのが「バガス」です。 …

脱プラスチックや脱炭素の流れが強まる中、食品容器の分野で新たに注目を集めているのが「バガス」です。 …

レジ袋有料化の背景を徹底解説!食品包装資材ディーラーが押さえるべき制度・課題・代替素材

2020年7月、日本で全国一律にスタートした「レジ袋有料化」。 スーパーやコンビニを中心に導入が進み…

2020年7月、日本で全国一律にスタートした「レジ袋有料化」。 スーパーやコンビニを中心に導入が進み…

「えっ、これ食べられるの?」話題の可食性包装、ちゃんと理解できてる?

プラスチックごみによる環境負荷が世界的な課題となるなか、新しい包装形態が登場しています。それが「可食…

プラスチックごみによる環境負荷が世界的な課題となるなか、新しい包装形態が登場しています。それが「可食…

営業力を高める!包装資材ディーラーが押さえるべきスマートパッケージング

脱プラスチックやフードロス削減への関心が高まる中、「スマートパッケージング」が新たな包装ソリューショ…

脱プラスチックやフードロス削減への関心が高まる中、「スマートパッケージング」が新たな包装ソリューショ…