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意外と知らない食品の冷凍・解凍メカニズム

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伸び続ける冷凍市場 意外と知らない冷凍メカニズム

近年、冷凍食品の市場は急速に拡大を続けています。

その背景には、消費者のライフスタイルの変化や冷凍技術の進化による味の向上、SDGsの実現に向けたフードロスの削減など、さまざまな要因が関係しています。

今や日本国民の生活には欠かせなくなった冷凍食品ですが、詳しい冷凍メカニズムや冷凍する際の注意点など、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。

メカニズムや注意するべき点を理解せず、製造・販売していると、知らないうちに冷凍食品の質を落としてしまっている場合もあるかもしれません。

この記事では、意外と知らない冷凍・解凍のメカニズムについて解説していきます。

 

そもそも冷凍食品とは?

当たり前に使われる言葉となった「冷凍食品」。

実は、ただ冷凍されている食品を指す言葉ではありません。

いくつかの条件を満たしている食品を冷凍食品と呼び、チルド食品、冷蔵食品との区別もしっかりとわけられているのです。

冷凍食品の条件

 

冷凍食品は以下の4つの条件を満たしている必要があります。

 

①急速冷凍した食品であること

 急速に冷凍することで、食品の組織が壊れて品質が変化するのを防ぐことができます。また、同時に栄養価をそのまま保つことも可能にしています。

 

②品温を-18℃以下で保管していること

 生産・貯蔵・輸送・配送・販売のすべての段階において、常に商品の温度が-18℃以下に保たれるように管理する必要があります。

 

 「-18℃」という温度は、約1年間ほぼ元の品質を維持できる上に、細菌の繁殖を抑え、食品の酸化や酵素反応などの変化を抑制できる温度とされています。

 (参考:一般社団法人日本冷凍食品協会)

  すなわち、「-18℃」という温度は、品質の安全を確保でき、なおかつ食品の美味しさを守ることのできる温度ということになります。

 

③前処理を施していること

 新鮮な原料を選び、丁寧に洗浄したうえで、不可食部分を取り除いたり、必要な調理を行うなど、消費者に代わってあらかじめ前処理を行うことが必要です。

 

④適切に包装していること

 利用者に冷凍食品が届くまでに、汚れたり、形がくずれたりしないよう、適切な包装が必要です。

 また、包装には、取り扱い方や調理方法など、法律で定められている項目を含む様々な情報の表示が必要となります。

 

この4つの条件や冷凍のメカニズムについて、次の章で詳しく解説していきます。

 

冷凍食品・チルド食品・冷蔵食品の違い

 

まず、冷凍食品は、前述のように、生産~販売まですべての段階において、常に商品の温度を-18℃以下に保たれて取り扱われる食品を指します。

 

次に、チルド食品は、一般に0℃~±10℃の凍らないギリギリの温度帯で流通される食品を指し、冷蔵食品よりも保存が効き、長時間品質を保てるのが特徴の1つです。

 

最後に冷蔵食品です。冷蔵食品は基本、3℃~10℃の食品を凍らせない程度の低温で流通、保存する食品を指します。

 

このように、3つの食品分類は温度帯によって変わります。

イメージとしては、自宅にもあるような冷蔵庫を想像するのがわかりやすいでしょう。

飲料などを入れる冷蔵室、乳製品などを保存するチルド室、アイスクリームや冷凍弁当などを保存する冷凍室、とそれぞれ温度帯が異なっているため、食品に合った温度帯で保存することができます。

 

食品冷凍のメカニズム

ここからは、食品を冷凍する際、食品にどのような現象、変化が起こっているのか、詳しく解説していきます。

当たり前に流通している冷凍食品ですが、そのメカニズムは意外と知られていないことがほとんどです。

この機会に冷凍メカニズムについて深く知り、提案の幅を広げてみてはいかがでしょうか。

 

氷結晶について

 

食品を冷凍するということは、食品中の水分を凍結され、氷結晶を生成するということです。

食品はさまざまな細胞が結合して組織となっていますが、凍結時にはこの細胞内の水分が集まって凍り、氷結晶となるのです。

食品内にこの大きな氷結晶が発生すると、周囲の組織が氷結晶によって圧迫され、組織を傷つけることで食品の劣化が起こったり、風味が落ちるなどのマイナスな作用が働いてしまいます。

 

したがって、食品を冷凍する際は、この氷結晶をなるべく小さくするというのが大切なポイントとなります。

 

最大氷結晶生成温度帯とは

では、どのようにしたら氷結晶をなるべく小さくして冷凍ができるのでしょう。

そのポイントは温度にあります。

 

一般に、食品中の水分は、-1℃あたりから凍り始め、-5℃程度でほぼ凍結が完了します。この-1℃~-5℃の温度帯は「最大氷結晶生成温度帯」とよばれ、

この温度帯の通過に時間がかかってしまうと氷結晶が大きくなってしまいます。

すなわち食品の組織への損傷を極力少なくするためには、この温度帯を急速に通過させる必要があり、30分以下の時間で通過させる凍結方法を「急速凍結」と呼びます。

反対に、この温度帯に30分以上留まる凍結方法を「緩慢凍結」とよび、一般に避けるべき方法です。

 

主な急速凍結方法

 

食品の急速凍結に用いられる凍結方法は、主に以下の4つがあります。

 

①空気式凍結(エアブラスト凍結)

 凍結方法の中でも、1番メジャーな方法で、冷凍庫の中で-50~-35℃の冷風を食品にあてて凍結させる方法です。

 大きく2つにわかれ、冷凍室の中に冷却された空気を吹き付けるバッチ式と、トンネルフリーザーなど瞬間冷凍機の中に食品を通して、トンネルを抜けるまでの間で冷風を当てて凍結させる連続式にわかれます。

 

②液体式凍結(ブライン凍結)

 リキッド凍結とも呼ばれ、包装し密閉された食品を不凍液に浸して凍結させる方法です。

 低温の液体をブラインといい、食塩水やアルコールなどが使用されます。

 

③接触式凍結(コンタクト凍結)

 コンタクト凍結は、金属板の内部に、-40℃~-30℃の冷却物質を流し、その金属板で食品を挟んで凍結する方法です。

 

④液化ガス凍結

 超低温で沸騰した液化窒素や液化炭酸ガスを食品に吹き付け、急速に凍結する方法です。

 

また、複数の方式を組み合わせた設備もあります。それぞれの凍結方法のメリット・デメリットを正しく理解し、食品にあった凍結方法の選択が必要です。

 

保管・流通時の冷凍食品の変化

 

ここまでは冷凍する際のメカニズム、氷結晶のなるべく小さくすることなどについて解説していきました。ですが、食品は凍結した際だけでなく、保管や流通している間にも常に食品内に変化は起こっています。

ここからは、保管、流通中の食品の変化について解説していきます。

 

氷結晶の粗大化・再結晶化

 

たとえ、急速凍結で微細な氷結晶が作られたとしても、貯蔵中に氷結晶は粗大化してしまい、「氷結晶の再結晶化」が起こります。

これは、冷凍貯蔵中にも起こる食品中のわずかな水分の移動によるもので、貯蔵温度が高い場合や、貯蔵中に温度変化がある場合に促進されます。

そのため、氷結晶の再結晶化を防ぐには、可能な限り低温で保存・流通させ、流通時の温度変化を避ける必要があります。

 

-18℃の温度を守るのみならず、より低温での保管・流通、並びに季節、環境を問わず温度を一定に保つことが冷凍食品をおいしく保つために必要不可欠なのです。

 

霜が発生してしまう原因

 

気づいたら、冷凍庫や冷凍食品のパッケージの内側に霜がついてしまっている経験は誰しもあるでしょう。では霜はどのような原理でできているのでしょう。

 

冷凍食品のパッケージ内につく霜も元となる水分は、食品から出た水分です。

よって、冷凍食品を一度、高い温度で流通・保管してしまった場合、はじめに食品の周囲の温度があがり、徐々に食品の品温も徐々に上がっていきます。

その後、周囲の温度が下がると、食品の品温は遅れて下がり周囲の温度より食品の品温の方が高い状態になります。すると、食品内から水分が蒸発し、パッケージ内に霜がついてしまいます。

 

冷凍食品の乾燥・冷凍焼け

食品のパッケージ内につく霜が、食品から出た水分ということは、霜が発生したとき食品は乾燥している状態ということになります。

食品が冷凍された状態で乾燥すると、パサパサした食感になるだけでなく、タンパク質の変性や脂質の酸化が進みやすくなるため、味、色が悪くなったり、いやなにおいがでてしまうこともあります。

これを一般に「冷凍焼け」の状態といいます。

 

霜や乾燥・冷凍焼けを防ぐためには、「保存、流通時の温度を一定に低く保つこと」「パッケージと食品の間に隙間を作らないこと」が必要です。

パッケージの工夫については、別記事で紹介します。

 

解凍のメカニズム

 

ここまでは、冷凍のメカニズムについてご紹介していきました。

冷凍食品を取り扱うにあたって、大切なのは、凍結方法だけではありません。解凍方法も同様に大切なポイントとなります。

解凍時は、熱を中心部まで伝えようと思うと、既に解凍された周囲の層を経て熱を伝えるためかなり時間がかかってしまいます。

解凍は凍結に比べ、緩慢になりやすいため、解凍方法の選択、温度管理は難しく、またおいしい食品を提供するのに、適切な解凍方法の選択はかなり重要なポイントとなります。

 

解凍時の温度帯に注意

冷凍食品の解凍を行う際に、品質の変化に影響を及ぼすのが、酵素反応や氷結晶の粗大化、再結晶化です。

この2つを起こさせないために重要となってくるのが温度管理です。

 

まず、凍った食材を約10~40℃の常温の環境下におくと、食品中の酵素反応が活発化し、食品が変質しやすくなります。

さらに、一度冷凍された食品は組織の一部が壊れているため、酵素反応がより起こりやすい状態にあっています。

つぎに、氷結晶の粗大化、再結晶化についてです。

これは、冷凍時のメカニズムと同様に-5℃~-1℃の温度帯で起こりやすく、生成させた氷結晶は、食品内の組織を傷つけるため、酵素反応をより促進させてしまいます。

 

-18℃以下に冷凍された食品を解凍するためには、この2つの温度帯を通過しなければなりません。

この温度帯をどれだけ早く通過するかが、おいしく解凍するための大きなポイントとなります。

 

主な解凍方法

 

ここからは食品の主な解凍方法をご紹介します。

先に説明した注意するべき温度帯も合わせてチェックしてみてください。

 

・自然解凍

 食材や食品を室温で解凍する方法で、冷蔵庫での解凍に比べ、比較的はやく解凍ができます。

 しかし、-5~-1℃、10℃~40℃の温度帯をゆっくり通過するため、氷結晶の粗大化が起こりやすくまた、食材の周囲から温度が上がっていくため、食品中の酵素の働きが活発になり、ドリップや変色などが起こりやすくなります。

 よって、生ものなどには向かず、すでに加熱調理済みで常温で置いておいても品質劣化のおそれが少ない食品に適した解凍方法です。

 

・流水解凍

 食品が包装されたまま、流水を用いて解凍する方法で、食品全体が水と接するため熱伝導率が高く、さらに水の流れによって熱を放出する速さが早くなります。

 -5~-1℃の温度帯を比較的早く通過する一方で、触れる水の温度が10~40℃である場合が多いため、食品表面の酵素反応から変性が起こり、変色などを起こします。

 自然解凍と同様に、加熱調理済みの食品には向きますが、生ものには向かない方法です。

 

・冷蔵庫解凍

 食品を冷蔵庫のなかで解凍する方法で、他の方法に比べて時間はかかってしまいます。ですが、酵素反応が活発化する10~40℃を通らないため、変色、においの発生を防ぐことができます。

 しかし、氷結晶が粗大化しやすい-5℃~-1℃の温度帯を時間をかけて通過するため、食感を重視する食品などにはあまり向きません。

 

・加熱・電子レンジ解凍

 食材に高温を加えるため、-5℃~-1℃、10℃~40℃の2つの温度帯を速く通過するため、食品の変化は起こりにくくなります。ただし注意点として、特に電子レンジ解凍の場合、食材の解凍ムラができやすい面があります。

 電子レンジは、マイクロ波の電波を照射して、極性をもつ水分子を振動させることで温度が上がり、その熱により食品に熱を通す仕組みです。

 よって、一部溶けた箇所があれば、その箇所にマイクロ波が集中しやすく、解凍ムラにつながります。

 

ここまで説明した通り、解凍方法にもそれぞれメリット・デメリットがあるのがわかるかと思います。

それぞれの特徴を理解し、食材に合った解凍方法の選択が、何より大切なポイントです。

 

冷凍・解凍メカニズムを理解し、適切な手段を選択

 

ここまで、食品の冷凍・解凍メカニズムについて解説をしていきました。意外と、奥が深く気を付けるべき点が多いのが伝わったのではないでしょうか。

冷凍・解凍のメカニズムを理解すると、それぞれの食品に合った冷凍・解凍方法も見つけや少なるかと思います。

また、合わせて冷凍食品に使用する容器・フィルムなどの資材、機械選びも重要になります。

別の記事では、それらの選び方や商品の紹介も行っておりますので、合わせてぜひご覧ください。

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